第28回全国大会の報告

第28回全国大会の報告

第28回全国大会準備委員会委員長

李 捷生(大阪市立大学) 

 第28回全国大会はさる8月31日から9月1日までの3日間、大阪市立大学にて開催されました。統一論題は「技術立国の再検討と工業経営の課題」でした。

1日目の見学会は川崎重工・兵庫工場(新幹線・電車・地下鉄車両の製造)において行われ、32名が出席しました。見学を通じて既存技術の再生を踏まえて生産システムの革新に取り組んできた製造現場の経験を学びました。また理事会の承認を得て、同工場に対し、羽石寛寿学会長から「生産経営賞」が授与されました。

2日目は特別記念講演として「米国への高速鉄道輸出に対する課題」というテーマで川崎重工業(株)・車両カンパニー理事(高速車両担当)の石塚理様にご講演いただきました。アメリカ高速鉄道車両の需給関係と日本製車両の特徴が紹介されるとともに、高度の技能と現場技術を踏まえた製品設計が日本の車両輸出競争力の源泉となった点が力説されました。また自由論題報告は各会場で実り多い議論が行われました。懇親会では大阪市立大学の西澤良記学長も参加され、終始和やかな雰囲気のなかで交流が深められました。

3日目には午前中、自由論題報告と研究分科会が行われ、午後は所伸之先生(日本大学)「日本企業の新たな競争優位の可能性:共創による知の創造」、森健一先生(森研究所)「イノベーション形成のモデルの検討」、下畑浩二先生「エレクトロニクス産業の競争力向上と資本主義モデルの制度補完性」などの統一論題報告とシンポジウムが開催されました。森先生は急遽入院されたため、報告は地代憲弘先生(追手門学院大学)に代読していただきました。これら報告では、もの造りとマーケティングの関連性、オープンイノベーションの意義、産業競争力の新しい規定要因などをめぐって、興味深い論点が提起されました。また活発な議論を通じて「技術立国」の経験と教訓をめぐり検討すべき課題はほかにも多く存在することが明らかとなりました。これまで実行委員会での議論を含めて挙げれば、つぎの点が注目されます。

第1に資源循環型低炭素社会の実現、次世代エネルギー社会の構築をはかるために、先端産業(環境保全、新エネルギー、バイオなど)における新技術の開発、そしてそれを促進するための政策が求められます。第2に国内の雇用を維持し創出するうえで、これまで日本経済を支えてきた伝統産業(自動車、電気電子、重化学、軽工業、建築業など)が果たす役割が重要であり、これら伝統産業を復興させるために、既存技術の再生が不可欠です。第3に環境の保全と雇用の確保という二大課題を相互規定的な関係にある問題として取り上げながら、次世代の産業発展を考案するには新しい知見が必要と思われます。例えば、静脈産業は環境保全の面で重要な役割を有すると同時に、労働集約的産業として雇用効果を持つものであり、その自立的発展の可能性を戦略レベルで再考する必要があります。さらに生産と市場の両面において、工業と商業と農業との間、また生産者と消費者とを結びつける新たな内需連関の仕組みを作り上げることが重要と思われます。これらの課題について今後とも大いに議論することが期待されます。

最後になりましたが、本大会において関係者の皆様をはじめ会員の皆様にご参加ご協力頂きましたことに、心から厚くお礼を申し上げます。次回の全国大会は北海学園大学の予定です。皆様奮ってご参加ください。

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