会長就任挨拶

大平 義隆(北海学園大学)

工業経営研究学会会員の皆様、北海学園大学経営学部の大平義隆と申します。工業経営研究学会12期理事会の第1回が2021年9月9日にZOOMで開催され、学会長を仰せつかりました。ここで、学会長就任のご挨拶として、学会に対する私の理解をお示しし、学会発展のためのご協力を皆様にお願いしたいと思います。

初めに、工業経営研究学会についてです。この学会は1986年に田杉競先生の呼びかけで発足した、我が国の学会の一つであって、モノづくりに関する企業活動を研究対象にする学会です。戦後、重化学工業化の成功で高度経済成長を成し遂げました。その背景は、欧米と異なる制度、すなわち三種の神器(終身雇用、年功制、企業内組合)だといわれています。オイルショック後、低コスト高品質化、ME化で低経済成長を成し遂げました。その背景はQCサークル、改善活動、多能工化、チーム作業方式、JITなどの生産システムの弾力性によるものでした1)。この学会は、こうした中で発足します。生産システムと弾力性、モノづくりのシステムとそれを支える人間のシステム、即ちモノづくりに関する企業活動、これを研究対象にする学会だと理解しています。私は、上記の「弾力性」「それを支える人間のシステム」「関する企業活動」に興味2)を惹かれ1989年大会3)からこの学会に参加しているバーナディアンです。

さて、工業経営研究の課題についてです。その後、バブル崩壊を機に日本的という言葉が消えていきます。生産システムやモノづくりのシステムでは、モジュール化、標準化、オープン化といったビジネスモデルが議論されてきました。弾力性や支える人間システムでは、働き方改革の対象となり、標準的な雇用制度が志向されています。ところがこうした変更には違和感を覚えます。工業経営研究で感じる違和感は、これと同じことではないでしょうか。我々が注目すべきはこの違和感ではないでしょうか。なぜ違和感が生じるのか、何を見落としているのか、なぜ放置してきているのか、これまで通り、地道な研究を積み上げましょう。

次に、工業経営研究学会の魅力です。魅力を述べるのは、会員の皆様に学会のお仲間を増やす働きをしていただくためです。第1に日本の経営の中心にあるモノづくりに関する企業活動を研究対象にする学会であることです。それゆえに、大きな責任があるところが魅力となるはずです。同時に、それを感じ取った人たちが集うところが魅力を膨らませています。第2に技術と理論の調和、現場主義の理念です。調和は理事会が東西で交換されるたび技術と理論が現れます。また、大会ごとに工場の現場見学が用意され、様々な工夫とともに現場に近い学会でいることができています。第3に国際的な活動をしていることです。会員すべてが参加できるグローバル研究分科会は海外企業の現場視察を30年近く毎年続けています。また数年に1度の海外開催は本学会の大きな特徴です。第4に年2回発行される、質の高い論文審査に支えられた学会誌があります。さらに質を高めるために、多くの会員に皆様には学会誌への投稿をお願いします。第5に優秀な研究を奨励する仕組みがあります。私は台湾東海大学の劉先生と、第1回の奨励賞を受賞し、本当にうれしく、その後の研究の支えになりました。こうした思いを広げるべく、研究奨励の仕組みを工夫していきます。

最後に、これまで特別に4年間コロナ下での困難なかじ取りしながら、モノづくり経営の研究を大きく前に進められた廣瀬会長と11期の理事会の皆様に心からの感謝を申し上げます。今後3年間、私と理事会の役員は、会員の皆様に有意義なサービスを提供し、かつ学会の成果が最大となるように、全理事会と気持ちをつなげながら努力してまいります。どうぞよろしくお願いします。

参照
1)風間(2017)の歴史的解釈を参考にさせていただきました
2)大平(2017)により詳しく興味のあり方が示されています。
3)1989年大会は関東地方で初めて、早稲田大学で大平金一先生を実行委員長として開催されました。
参考文献
風間信隆(2017)「工業経営研究の歩みと新たな課題」工業経営研究学会編『変革期のモノづくり革新』中央経済社。
大平義隆(2017)「我が国工業部門の経営管理における文化差の解釈」、工業経営研究学会編『変革期のモノづくり革新』中央経済社。
田口直樹(2017)「日本のモノづくり技術の再評価と技術競争力再評価の課題」、工業経営研究学会編『変革期のモノづくり革新』中央経済社。

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