設立趣意

工業経営研究学会設立趣意書

1986年9月20日

 

今日の産業社会は先端技術を中心とした高度技術革新時代に入っている。それは、マイクロエレクトロニクス、ニューメディア、新素材、バイオテクノロジー等に代表され、工業経営を巡る技術革新と経営環境の変貌には目を見張るものがある。この激変する状況のなかで、事業機会の創造的活用を図るところに最近における工業経営の特質が見いだされる。

このような新しい工業経営の学問的研究には、多方面にわたる専門的知識や経験の合成が必要であり、専門を異にする研究者の協力が要請される。今や、そのための異種専門家交流の場の設定が不可欠的な重要性を持つようになってきた。

もとより、上述のごとき研究は、今日のようなハイテクノロジーの時代から遠くさかのぼった歴史をも射程内に入れ、かつそれとの関連において体系化を図る必要がある。また、現在遂行されており、未来において展開される技術革新も、真に人類のための技術革新として、いかに位置づけるかを考える工業経営の研究でなければならない。さらに経済体制との関連における考察が必要であり、資本主義工業経営、社会主義工業経営を含めたグローバルな視点からの研究であるべきは当然であろう。

工業経営の研究は、経営技術ないし管理技術の研究を含むが、それは、常に進展する企業経営の原理論及び管理論、組織論と結び付くことによって、初めて成立する。そして、こうした体系において核をなすものは、経営の原理論である。工業経営という企業経営の問題だからである。

工業経営の研究はまた、経営実践の現実を知ることを不可欠とする。これを離れて経営技術ないし管理技術の研究はほとんどありえない。この観点から、企業経営の現実を理論と実践の緊密な相互作用を通じて研究するならば、従来の経営理論では説明しがたい事実をも適切に説明しうる新しい経営理論の創造も期待されるだろう。理論は現実を出発点とするからである。

以上のような目的意識をもった研究は、ある特定の分野についての専門知識の探求のみでは不可能である。もとより、それぞれの分野の研究を縦に深めていくことの重要性は当然の前提であるが、これに加えて、今日われわれに必要とされているのは、他分野との横の交流ないし結合である。

特定分野の専門家個人が他の学問領域の研究成果を学習し、学際的研究を行うことは、不可能ではない。しかし、そこには自ずと限界がある。この限界を打破し、更に前進するには、異種専門家交流の場を設定し、それぞれの専門的知識を提供しあい、交換しあう活発な相互作用を促進することが必要である。

かくして、工業経営の研究という研究目標に関して共通の関心をもつ異種専門家の交流に意義を感ずる人びとが、自らを豊かにするために、研究者集団を形成することが緊急事となっている。本学会は、この「場」の設定による工業経営、殊に革新的工業経営の研究及びその研究成果の普及を目的とするものである。