2013年第28回全国大会のご案内

第28回全国大会準備委員会委員長

李 捷生(大阪市立大学)

 今年の全国大会は8月30日から9月1日までの3日間、下記のような要領で大阪市立大学にて開催いたします。
本学会羽石会長の3年間の基本方針は「工業経営研究と日本企業の再興」であります。それは、グローバル競争の中で日本の主要産業が構造的な停滞現象を示しているときに、東日本大震災という未曾有の災害に遭遇したことを受け、日本の企業と経済の再興が本学会の挑戦するべき主要課題であることを提示したものであります。昨年度大会は、その初年度として「大災害の時代、工業経営研究は『何ができるのか』・『何をしなければならないのか』」をテーマとして統一論題を設定しました。
本大会では、課題をさらに具体化し、統一論題を「技術立国の再検討と工業経営の課題」と致しました。それは、日本工業の再興のために、「技術立国」日本の過去・現在・未来を再検討して、日本工業がチャレンジするべき課題を具体化することが求められているのではないかという実行委員会の議論の結果であります。実行委員会では、概ね次のような議論がなされました。
第1に、エレクトロニクス産業をはじめとする「技術立国」日本の「崩壊的」現状は、日本経済の将来に不安を抱かせるものであるが、他方で、環境技術(新エネルギー、自然環境保全、資源リサイクルなど)や新素材、ライフサイエンスなどの新技術領域において技術革新が進展しつつあることは、「技術立国」日本の将来に明るい展望を抱かせることも確かである。しかしながら、重要なことは、これらの技術革新が、具体的な生産システムとして企業化され、日本経済の「再興」を担い、雇用を創出し、日本人の生活水準を維持発展させる産業になりうるかどうかである。具体的な事例を含めて、日本の技術や産業の具体的なあり方を検討することが大切である。
第2に、グローバル競争の下、安価な労働力を求めて多くの生産企業が新興工業国に製造拠点を移し、それが国内生産の空洞化、雇用の空洞化(雇用の削減、非正規労働化)に拍車をかけているわけであるが、国内の雇用を維持し創出するうえで再確認するべきは、これまで日本経済を支えてきた伝統産業(自動車、電気電子、重化学、軽工業、建築業等)の果たす役割である。これら伝統産業の既存技術の再生によって日本工業の復権を検討することもきわめて大切な課題である。また、世界の生産企業は、イノベーションやサプライチェーン全体を、グローバル・ネットワーク・システムとして展開している。「閉鎖型」といわれる日本企業が、このようなグローバリゼーションのあり方にどのように対応すべきか、世界の先進的事例に学びつつ日本の工業経営の問題点と課題を明らかにすることも日本工業の復権を考える上で重要である。
以上、日本企業の再興には多くの新しい知見や戦略が必要です。上記の問題点以外にも、議論するべき課題は多いと考えます。「技術立国の再検討と工業経営の課題」に関して、さまざまな視点から活発な議論が展開されることを願ってやみません。
工場見学は、既存技術の再生と向上をベースに生産システムの革新に取り組んできた川崎重工・兵庫工場(新幹線・電車・地下鉄車両の製造)を予定しております。
多数の会員の研究報告やご参加を心よりお待ちしております。

  • 大会日程 2013年8月30日(金)~9月1日(日)
    • 8月30日(金) 見学会(川崎重工(株)兵庫工場)、理事会
    • 8月31日(土) 自由論題報告、特別講演、会員総会、懇親会、理事会
    • 9月 1日(日) 統一論題報告・シンポジウム、研究分科会、理事会
  • 大会会場 大阪市立大学杉本キャンパス 学術情報センター10F
    • (大阪市住吉区杉本3-3-138 JR阪和線杉本町駅、徒歩5分)
  • 統一論題 技術立国の再検討と工業経営の課題